COLUMN
2019.10.24
腸を守る役割を持つ「腸内フローラ」。
人間が胎児として母体中にいるとき、腸管の中には細菌はありません。
では、いつ腸内細菌が腸の中に出来てくるのでしょうか。
それは、生まれてくる時、もしくは生まれた直後。
通常の分娩か、帝王切開のどちらの出産かによって異なります。
今回は、「腸内フローラ」の始まりについて解説します。
この機会に、自身がどちらで生まれたのか、聞いてみてはいかがでしょうか。
通常分娩では、胎児は母親の体を通り、誕生します。
いわゆる産道、具体的には
を進んでいきます。
産道には、母体の皮膚や腸由来のものを含めた「常在菌」がいます。
胎児は、産道を「舐める(なめる)」ようにして外に出ます。
この行為によって、口から腸の中に細菌を入れていくのです。
乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌を含んだ様々な種類を受け取るそうです。
初めて、その子の腸内常在菌の元となるものが入り、やがて定着します。
通常分娩では、生まれてくる際に初めて細菌が腸内に入ります。
お母さんの常在菌を取り入れ、「腸内フローラ」が作られていくのですね。
帝王切開は、直接、母の子宮を開いて赤ちゃんが取り出されます。
胎児は産道を通らないので、「舐める」ことはできません。
では、どうしたら腸内細菌を手に入れられるのでしょうか。
ヒントは、産声です。
声を出す前には、肺を膨らますために息を吸う必要があります。
産声を上げるときも、例外ではありません。
帝王切開では子宮が切開されて、赤ちゃんが外に出てきた時に初めて息を吸います。
この息を吸う時こそ、赤ちゃんの口の中に細菌が入り込む瞬間となるのです。
帝王切開のケースでは、ほとんどが手術室で行われますよね。
赤ちゃんが吸い込むのは、「手術室の空気中にある細菌」ということになります。
そして、口の中に入り、初めて腸の中に細菌が棲むことになるのです。
帝王切開の場合は、生まれた直後に初めて腸の中に細菌が入ります。
空気中の細菌から、「腸内フローラ」を形成していきます。
今回は「腸内フローラ」スタートの瞬間に注目しました。
お母さんのお腹にいるときには、まだ発生していません。
産まれる際の状況によって、以下のどちらかの方法で細菌を入手するのです。
最初に入った細菌がベースとなり、ひとりひとりの「腸内フローラ」が決まります。
次回は、腸内細菌叢が定まることについてお話します。
神谷仁医学博士